研究会情報
2006年度
関西「子ども学」大学関係者の集い
多くの大学に「子ども学」に関する講座が誕生し始めています。内容を概観してみますと従来の保育や幼児教育をはじめ、心理や育児学など様々な教科や教育内容が見られます。今後「子ども学」というコンセプトのもとに、教育内容に関して関心ある者が一同に会して議論を深め、その内容について共有できればと兼ねてより考えていました。幸いにも関西には「子ども学」に関する大学が複数あり、今回初めての試みとして、大学関係者の集いを企画しました。
稲垣由子、森津太子(第3回子ども学会議実行委員・甲南女子大学)
所 真里子(日本子ども学会運営委員・CRN)
日時 |
: |
2006年4月8日(土)午後1時30分~4時 |
場所 |
: |
甲南女子大学(兵庫県神戸市東灘区) |
内容
開催報告レポートをご覧ください
開会の辞
本研究会の開催趣旨について
所 真里子 チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)
第一部: 「子ども学」がめざすもの
- 甲南女子大学総合子ども学科について
稲垣 由子(甲南女子大学人間科学部総合子ども学科) - 奈良女子大学子ども学プロジェクトについて
浜田 寿美男(奈良女子大学文学部人間行動科学科) - 全体討論 ~「子ども学」の今後の展開について~
第二部: 「子ども学」関係者・機関のネットワーク
- 各大学の取り組み
上田 信行(同志社女子大学現代社会学部現代こども学科)
竹内 伸宜(神戸海星女子学院大学文学部心理こども学科)
吉岡 眞知子(東大阪大学こども学部こども学科) - 全体討論 ~「子ども学」関係者・機関の今後の連携について~
日本子ども学会の活動と設立経緯の紹介
木下 真(日本子ども学会事務局)
閉会の辞
対象 |
: |
関西にある「子ども」に関する学部学科専攻を持つ大学教職員 |
会費 |
: |
学会員は無料、一般は500円 |
主催 |
: |
第3回子ども学会議実行委員会・甲南女子大学総合子ども学科 |
共催 |
: |
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN) |
協力 |
: |
奈良女子大学文学部「子ども学プロジェクト」 |
開催報告レポート
現在、全国には「子ども(あるいはこども)」を冠する学部・学科を有した大学が次々と誕生しています。中でも関西にはそうした大学が数多くあり、互いに関心を持っていたはずなのですが、これまで関係者同士が顔をあわせることは殆どありませんでした。そこで、関係者が一堂に会し、関心や問題意識を共有する機会を設けようと、去る4月8日、CRNの協力を得て、「関西『子ども学』大学関係者の集い」を甲南女子大学で開催しました。
当日は、7大学から19名の方が参加されました。会の前半では、「子ども学」というコンセプトのもとで、今後、私たちが目指していくべきものは何かについて議論しました。まず、学内に「国際子ども学研究センター」を設置するなど「子ども学」に関して先進的な取り組みを行ってきた甲南女子大学(稲垣由子氏)と、「子ども学プロジェクト」というユニークな取り組みを行っている奈良女子大学(浜田寿美男氏)から、活動の趣旨や概要等を報告していただき、これをきっかけとして、参加者全体で議論を深めました。また後半では、上記以外の大学の代表者(同志社女子大学上田信行氏、神戸海星女子学院大学竹内伸宜氏、東大阪大学吉岡眞知子氏)からも当該の学部・学科の設立経緯や特長を紹介してもらい、参加者間の相互理解を深めました。そして、今後、どのような連携体制をとっていくことができるかを話し合いました。
今回、このような会を開催してわかったことは、参加大学の多くが同じような問題に直面しているということでした。例えば、「子ども学」というまだ明確な定義のない学問を、いかにカリキュラムという具体的なかたちにして学生に伝達するのかというのは、どの大学にも共通する悩みでした。現在は、各大学がその大学なりの「子ども学」を追求し、それを実現しようとしていますが、今後は、そうしたこれまでの努力を生かしつつも、一つの学問領域として、ある程度共通した方向性を持つことの重要性を皆が認識していました。
いまひとつの問題は、大学運営にも関わるより現実的な問題です。「子ども」を冠する学部・学科は、その多くが保育士、幼稚園教諭、小学校教諭などの資格課程を持っています。これは昨今の学生の資格志向によるところが大きいのですが、資格に重きを置くと、どうしてもスキル獲得のための教育が偏重され、「子ども学」の理念の部分が疎かになってしまいます。「子ども学」を謳う学部・学科が、資格者養成を主眼とする学部・学科と差別化をはかるにはどうしたらよいか、これも多くの大学が頭を悩ませる問題でした。
今回の集いでは、残念ながら、上記のような問題を共有するまでの段階で時間切れとなってしまいました。しかしこれらの問題は、いずれも個々の大学だけで解決するものではなりません。むしろ共通の関心、共通の問題意識を持つ当事者同士が、大学という枠を越えて率直な意見を交換し合うことで、解決の道が開くものと思われます。今後も継続的に交流の機会を持ち、いずれは全国規模で関係者が集える会が開催できればと考えています。
(甲南女子大学人間科学部総合子ども学科 森 津太子)