小林登「子ども学」賞について

第1回(2023年)受賞者紹介

認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク
(難病の子どもと家族の支援団体)

 

■受賞者プロフィール・業績
難病や慢性疾病・障害のある子どもたちとその家族を支えるために、医師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、認定遺伝カウンセラーなど、さまざま立場の人たちとのネットワークづくりを行い、相談・交流・啓発活動を続けている。また、病気の子ども持つ先輩保護者によるピアサポーターの活動や病児の教育・遊び支援、政策提言など、多岐にわたる活動を行っている。1988年設立。

 

■贈賞理由
認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワークの活動・業績について、下記の3つの視点で評価した。

1)社会への波及効果の大きさ
多様な難病の子ども・家族に寄り添い、QOL全般を支援する仕組みを整備し、各方面の専門家やボランティアを有機的につなぎ、25年以上にわたって、多彩な学際的な交流や地域での活動を地道に展開し、発展し続けていることに、社会への波及効果の大きさを認める。 

2)子ども学への貢献度
難病や障害のある子どもと家族の拠り所となるチャイルド・ケアリング・デザインに大きく貢献してきた。学会発表、出版物も多数あり、専門を超えて、医療・医学の発展にとどまらず、多様な子どもたちのQOLを高め、成育環境を豊かにし、心豊かな地域づくりにも役立っており、子ども学に大きく貢献している。 

3)研究業績や活動の卓越性
特定の人や活動にとどまらず、多様な分野の多くの人々の協力のもとに、全国規模の支援ネットワークを展開し、継続・発展的に活動している取り組みは卓越しており、チャイルドサイエンスへの貢献は多大である。
また、その活動は小林登先生が思い描いていた「小児の難病を横断的にとらえ、小児難病全体を支援する活動」をチャイルド・ケアリング・デザインとして実現したものである。
以上により認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワークが小林登「子ども学」賞に相応しいものとして選定し、第1回小林登「子ども学」賞を贈呈する。

 

■受賞者挨拶
認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワークの福島でございます。このたびは、栄えある第1回 小林登「子ども学」賞 の受賞者にお選びいただきありがとうございます。当会の35年間の活動にとりまして大きな節目であり、大変な光栄でございます。

当会の活動は、1988年に心ある小児科医たちと難病の子どもの親たちによって始まりました。その直接的なきっかけを与えてくださったのが小林登先生です。先生は当会の生みの親、そして育ての親でもあります。昨年7月、難病のある子どもの父親であり、当会の創設者である小林信秋が急逝いたしました。小林信秋が生前、「小林登先生は自分の後見人なんだ」といつも言ってことを思い出します。

設立当初の困難な時期、小林登先生のお力添えなしには、おそらく活動の基盤となる社会的な信用の獲得や多くの方々たち、あるいは企業や財団などからのご支援を得ることは難しい時代であったと存じます。今回の受賞は、小林信秋が誰よりも喜んでいることと思います。

当会について紹介させていただきます。1988年に活動が始まり、10年後の1998年に現在の組織が新たに設立され、翌年にNPO法人の認証を受けました。爾来一貫して病気や障害のある子どもとその家族、ならびにこれらを支援する人々を対象に、民間活動らしく、ときのニーズに柔軟に応じながら、相談活動・交流活動・啓発活動・地域活動の4つを柱に活動を行って参りました。親たち、地域の人たち、さまざまな職種を超えた人たちのネットワークを活かした活動が大きな特徴です。具体的な活動をご紹介します。

まず、相談活動です。1988年8月22日の「電話相談室」の開設日には全国からの相談電話が殺到したと聞いていますが、当会の活動は、この「電話相談室」で伺ったお話を参考にしながら展開・発展してきました。現在では、子ども病院において病気や障害のある子どもを育てた経験のある親たちがその体験的知識を生かして相談をお受けする「ピアサポート」が5箇所の拠点で行われています。

次に交流活動です。病気や障害のある子どもたちとその家族を対象として「友だちつくろう」を合い言葉に、サマーキャンプ“がんばれ共和国”を毎年開催しています。今年は岩手、東京、静岡、愛知、兵庫、熊本、沖縄の全国7箇所で建国されました。“がんばれ共和国”は、地域の医療機関の協力のもとに医療班が常駐するなど、濃厚な医療ケアの必要な子どもたちの「安心と安全」にも配慮をしており、病気や障害の状態や程度によって、こちらから参加をお断りすることはありません。また、親たちやきょうだいなどを対象とする家族支援についても早い時期から着目・実践をしています。

このほか72団体が参加し定例会議を行っている「親の会連絡会」、遊びのボランティア「プレイリーダー」の養成とご家庭や病棟への訪問、青い目のサンタクロースが子ども病院に伺う「サンタクロースの病院訪問」などもあります。

啓発活動としては、病気や障害のある子どもとその家族のQOL(いのちの輝き)の向上をテーマにした「こどもの難病シンポジウム」が今年で44回を数えました。立場や職種を超えた横断的な意見交換や学びの場としての評価を受けています。

地域活動としては、“あおぞら共和国”があります。山梨県北杜市白州で2011年の夏から始まった「みんなのふるさと“夢”プロジェクト」で、八ヶ岳や甲斐駒ケ岳など雄大な自然に囲まれた風光明媚な土地の寄進をいただき、最大60名が宿泊できるロッジ5棟のほか、野外ステージ、子どもたちのプレイルーム、みんなが集まる交流棟が完成しました。利用者はすでに、延べ1万人に達しています。2019年に完成した交流棟は、小林登先生の多大なる業績を讃え、小林登記念ホールと名付けられました。

このほか、ソーシャルアクションとして、1998年頃から小児慢性特定疾病の法制化運動にも取り組み、親の会連絡会の有志とともに国会や厚生労働省に要望活動を行い、2002年には厚生労働省の検討会が発足、2004年に児童福祉法改正案が臨時国会で成立、2005年に新しい小児慢性特定疾病制度が施行されました。その後、2011年頃より特定疾患治療研究事業の40年間の悲願であった法制化への動きと合わせて、親の会連絡会の有志とともに小児慢性特定疾病制度2度目の法制化に取り組み、国会や厚生労働省への要望活動などを経て、2014年には衆議院厚生労働委員会と参議院厚生労働委員会において参考人として意見陳述するなど、法律の制定に一定の役割を果たしました。そして2015年1月には、新しい小児慢性特定疾病制度がスタートし、当会活動の一部は、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業として、東京都からの委託を受けて行われるようになっています。

最後となりますが、第一回『小林登「子ども学」賞』の受賞が私たちの活動にとって大きな励みとなることをお伝え申し上げるとともに、今後も、小林先生のご提唱された「子どものウェルビーイングが保障された社会の実現」に寄与できるよう、初心を忘れず尽力して参りたいと存じます。
本日は誠にありがとうございました。

      (認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク専務理事 福島慎吾)

*認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク https://nanbyonet.or.jp/

 

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